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実践的理念経営のための処方箋

こなす、捌く(さばく)

毎日膨大な仕事をしていますと、とにかく量をこなすということに陥りがちです。しかし当然のことですが、質がともなっていて初めて良い仕事と言えます。
質の高い仕事には顧客や依頼者が納得する仕事の質、現在だけではなく未来を見通した仕事、奇手奇策ではなくどこに出しても王道を歩める普遍的な仕事、応急処置だけではなく根本的な解決に至る仕事、部署だけの視点ではなく会社全体最適の視点からも考慮された仕事、等々いくらでも定義を考えられます。
人の上に立って、組織の方向性を考え、メンバーを指導し、牽引する役割ともなると、熟慮の上にも熟慮が必要です。あらゆる視点から考え抜き原理原則によって導くことが求められます。その懐の深さと広さ、哲学によって人材と企業を育て、次代に継承されている経営者も世の中にはおられますが、全体から見ると少ないです。
プラトンは現実界と理想界(イデア界)の二元論を考え、現実は理想を追求しながら変わっていくものであるという哲学を創始しました。
私たち人間が一生を生きていく際に、生き方や働くことの充実を考える場合、目の前のことだけをこなすという視点だけではなく、問題や状況を分析し見立てること、そして解決策を立案するには理想の方向はどちらなんだという思考をもって状況を捌く(さばく)力がリーダーには求められます。
表面的、外観的なことではなく、本質を求め続けることです。本質にアプローチするにはやはり哲学領域の思考、そして個人だけではなく人と人の相互作用の中からより優れた本質へのアプローチができるように学習型、対話型の組織運営が必要になっていきます。

まずは何をさておいても、その企業の存在意義、使命、目的といった理念を確立することです。これはコリンズの言葉です。理念は作るものではなく、対話によって発見するものである、理念は対話する社員の間に存在するものである、これらはP.センゲの言葉です。
企業の目的を探るにはその扱う商品やサービス、顧客や社会との関係性の本質を徹底的に考え抜くことです。そこから仕事の本質が自身の人生目的とのシンクロが生じていきます。
本質を考えることを省略して、当たり前のごとく、商品を日々販売したりしていても当座は何も困らないでしょう。しかしいつか人を指導したり、会社でのポジションが上がっていくにつれて、自分はすること(Do)以外にはあり方(Be)は何も考えてこなかったことに気づくのですが、そうならないようにできるだけ早く日々の仕事をこなすことに加え、本質によって捌く力を身に付けて行くことが職業生活、さらには人生全体の充実につながり、よりステージが上がっていくでしょう。
企業の成長発展は個々の社員の本質を考え行動を起こす力、目的と目標を共有したチームワークによる組織力の発揮にかかっているのではないでしょうか。 バブル崩壊後、デフレや円高、リーマンショックなどの背景から人材投資には消極的になってしまった企業が多かったようですが、そういう環境でも人材育成を継続している企業ももちろん多数ありましたし、一方で改めてこの原則に気が付いた会社では人材の育成、チームワーク力の向上を目指した本格的な取り組みが再び始まっているところも最近は目立ちます。